母 なる 証明。 映画「母なる証明」あらすじ、感想【絶妙なダンスで〆る圧巻のラスト】

映画「母なる証明 」ネタバレあらすじと結末・みんなの感想

母 なる 証明

静かな田舎町。 トジュンは子どものような純粋無垢な心を持った青年。 漢方薬店で働く母にとって、トジュンの存在は人生の全てであり、いつも悪友のジンテと遊んでいることで心配の絶えない毎日だった。 そんなある日、女子高生が無惨に殺される事件が起き、容疑者としてトジュンが逮捕されてしまう。 唯一の証拠はトジュンが持っていたゴルフボールが現場で発見されたこと。 しかし事件解決を急ぐ警察は、強引な取り調べでトジュンの自白を引き出すことに成功する。 息子の無実を確信する母だったが、刑事ばかりか弁護士までもが彼女の訴えに耳を貸そうとしない。 そこでついに、自ら真犯人を探すことを決意し行動を開始する母だったが…。 C 2009 CJ ENTERTAINMENT INC. , LTD. ALL RIGHTS RESERVED ポン・ジュノ監督の作品を観るのは三作目ですが、一番芸術性が高い映画だと思います。 そのぶん内容もすっきり分かりやすい感じではないですね。 息子の立ちションをしげしげと見つめたり、同じ布団で寝たりと、息子に対する溺愛ぶりが度を過ぎており、少しずつ観客に違和感を感じさせます。 この母親の恐ろしさがはっきりするのは、息子が五歳の時に無理心中しようと農薬を飲ませたことが明らかになる場面ですね。 日本では親子間の無理心中は美化されますが、率直に言って「我が子を殺す」無理心中は、異常な精神状態のなせるわざで、実際、息子のトジュンにとっては「殺されそうになった」です。 物語の進行とともに、母親の精神は徐々に追い詰められ(自分で思い詰めて?)、廃品回収業の老人への放火殺人で遂に崩壊します。 自分の殺人も、息子の代りに刑務所に入れられた青年のことも、すべて忘れてしまいたい。 狂ったように踊り狂う母親の姿は「母の愛」と呼ぶにはあまりに闇が深く、恐ろしい。 ポン・ジュノ監督の人間洞察の冷徹さが光っています。 決して気分が良くなる内容ではなかったのに、なぜか深く好感を抱き、何度も反芻しています。 絵画を鑑賞しているように思える場面がいくつもあり、何でもないシーンをとても美しく感じました。 素直で単純な性格なもので、創り手の思うがままに誘導され、ゾクゾクしたり、ドキドキしたり大変でした。 真犯人とされる男性の前で母親が号泣した時、その胸にはどんな思いがあったのだろう…と考えています。 申し訳無さ?憐れみ?自分の息子を重ねていた?ここだけ、真相を聞いてみたいです。 最後の方、トジュンが母親に鍼を渡すシーンで光が射し込んだ瞳がとてもきれいに澄んでいて、その目が表しているのは「全てを見通している目」なのか、「一片の曇りもなく母親を信じている目」なのか、どちらなのだろうと思いました。 最後のシーンは本当に美しく、流れる音楽の明るさにも少し救われた気がしました。 音響演出がずば抜けて上手い監督なので、ヘッドフォンをして最大音量で見るべきだろう 天才演出家ポンジュノの技量を堪能すべきなのだ あるシーンで、「筋書としてショック」という頭の中だけの衝撃でなく、 文字通り全身を震わせるような「恐怖体験」を視聴者にさせるようあの手この手を使ってくる。 (というか別に筋書としてはショックではないし……それでもあのシーンは怖かった) ややネタバレになるが…… 上述シーンの直前。 画面はアップや同一のカメラを多用して視覚情報を増やさない。 BGMも使用せず、話の内容に注力がいくように筋書も構成し、とにかく聴覚に意識がいくようにしている。 その流れの最後一瞬では何が言いたいのかわからない。 「ん?」と視聴者の頭が少し空白になったところに、件のシーンがくる。 極大のBGM、畳みかけるようにスパスパと切る編集、いきなり終わり新規シーンが3つ平行され、内1つはフラッシュバック、からの逆再生、そしてサブリミナルであの視線を見せつけてくる めちゃめちゃ怖かった サブリミナル演出はまじで巧みすぎて、自分たちも実は見ていた、見られていたという根源的な恐怖がある (再度見るとそんなことは絶対に起こりえないようになっている 全部ポンジュノの手のひらの上である) これは、ながら見で音量小さめだと絶対に体験できないので、是非大音量で食い入るように見てほしい とにかくあのシーンに丁寧に丁寧に技を重ねてきている ほかにもあるけど 殺人の追憶の鼻歌のシーンもその類いだが(あれもこわかった) この作品はそれを上回っている ミステリーと愛、社会問題と倫理的葛藤の合わさった重層的な構成が文学的かつ、これに伴う映像表現、演技共に素晴らしいものがあった。 見始めたときは、よくある展開に思えたが、中盤あたりから、他にはない韓国映画の真骨頂を目の当たりにしたように思う。 以下ややネタバレ 息子の純粋な瞳の記憶に映る、母の愛がゆえの罪。 母が息子を愛するほどに、その罪が自分に刺さる。 真実に対面することによって、蓄積されてきた責苦から親子ともども解放されて、刑務所の中、鉄格子越しに母子の愛を感じて最後を迎えるのではないかという、やや暗めの素直な終わりを予想していたが、見事に違っていた。 一層恐ろしく、愛と罪と忘却と蘇る記憶との螺旋を下る先を示すような終わり方であった。 時間をおいて、またじっくりと鑑賞すれば、様々に工夫されたディテールに驚かされるに違いない。 ポン・ジュノ監督作品ということで興味があり鑑賞しました。 まず、Amazonでのジャンルが「ホラー」になっていたり、ビョーク主演の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」的なアート系ミュージカル作品などではありません。 ヒューマン・ミステリー・ドラマです。 涙の人間ドラマではなく、守りたいものを必死で守り抜く映画。 母は真実を知っていても、警察に打ちあけることもなく、息子と暮らす。 物語は、バカにされたらやり返してしまう知的障害の息子の行動と、どんなことがあってもそんな息子を守り抜こうとする母親の存在といった、家族のヒューマンドラマになっており、冒頭とエンディングで見られる母の踊りのシーンへとが繋がる美しさがとても印象的な作品だ。 秘密のツボを圧して、記憶から解放されなければならない母親の壮絶なる息子を思う気持ちが深く沁みます。 また、物語の展開やスピード感が絶妙で、息子への限りない愛情と真犯人探しのためにグイグイと行動していく母親の姿や、その行動力から来るふとしたきっかけで次々に溶けていく推理ドラマ的展開に一瞬で引き込まれる。 また、効果音や場面転換の音楽センスも狙い通りの効果となっていて、作品の面白さが増している。 物語の内容は、漢方薬店で働く母(キム・ヘジャ)が、女子高生殺人事件の容疑で逮捕された息子を救うため、真犯人を追うといった物語。 母は、知的障害の息子・トジュン(ウォンビン)の無実を晴らすために、刑事や弁護士に頼みつくが相手にしてもらえず、自らが真犯人を探しをする。 被害者について調べてみると、殺された女子高生・ミソン(チョン・ミソン)は、貧困で誰とでも寝る売女であることがわかり、その相手を携帯電話の変態カメラ(シャッター無音改造アプリ組み込み済み)で写真を収める癖を持っていた。 女子高生を知る周りでは、それらの発覚を恐れて殺されたのだろうという意見で一致しており、母もその決定打を求めて行動を行うが、その先で、息子の犯行現場を見たという真実と出会ってしまう。 息子を守るために目撃者である廃品回収業者の老人を撲殺する。 そして母はその家(廃品回収行社)に火を放ち老人の屍体もろとも焼却する。 やがて、ミソンの彼氏だと名乗る別犯人が名乗りを上げて、トジュンは釈放される。 いくつかの記憶を取り戻しているトジュンはこの事件の矛盾に気づきながらも母は言及せず、親孝行バスツアーの参加者の集合場所で、母親が落とした針セットを焼け落ちた廃品回収業社の中から拾ったことを母に告げる。 母はうかない顔をしていたが、全てを忘れることのできる「秘密のツボ」を自ら針で打ち、参加者とともに陽気な音楽に合わせてひたすら踊る、そんな悲壮感漂うラスト。 このハッピーエンドとも違った、絶妙な落としどころに、現実感が在るのだと思う。 母親役の女優さんは一目見るだけで、その佇まい、その眼差し、韓国芸能界事情をまったく知らない私でさえただ者ではないなっと思わせるほどの圧倒的存在感と演技力。 素晴らしいものでした。 一方内容ですが、今ひとつ意外性も共感できるところもなく、なんというか中途半端な印象を受けてしまいました。 なりふり構わず息子を守り抜く母親の狂気さえ感じる愛情を描いたのでしょうか。 残念ながら現実社会でもこの映画のような犯罪が起こっています(母親が子どもの犯罪を庇い隠蔽する的な)。 かつて村上龍氏が「現実がフィクションを超えてしまった」と憂いていましたが、この映画を観ても日常のニュースに比べてあまりインパクトを感じなかった自分に少し怖さを覚えてしまいました。 Mother adopts a wicked fluctuating screenplay that relentlessly nurtures its characters. Joon-Ho, of 'Memories of Murder' fame, imports his infamous dark humour into another murder mystery. However, instead of instantly replicating the aforementioned triumph, he alters the perspective of the investigation to be that of a lamenting mother. The results indicate that South Korean cinema is quite possibly the best exports for thrillers in the entire world. Let me go ahead and put that subjective statement down as fact. I've seen enough of them to know that Korean directors understand the genre through and through, with Mother reaching the top echelon. A hard-working widow strives to prove the innocence of her intellectually disabled son, who has been framed for the murder of a young girl. Ravenously exploring the concept of how far a mother is willing to go for their own flesh and blood, Joon-ho's script is packed with an alluring sense of unpredictability and poetic thrills that present a darker side to South Korean culture. When the opening cinematic sequence is of the titular parent eerily dancing to a pop song in the middle of a wheat field whilst looking directly at the camera for five minutes, well, you start to develop an idea on what type of film this is. Joon-ho cleverly throws the audience off target on multiple occasions, to showcase a variety of different emotions and themes that our unnamed mother experiences throughout her arduous journey. Pain. Melancholy. Anger. His consistent juggling of tones, a trademark he has essentially acquired throughout his filmography, allow us to feel these emotive consequences with the protective mother. In just one scene, most notably the prison visitation, Joon-ho injects sorrow from the mother's perspective, unshaken trepidation from her son and hilarity from the actions taken whenever someone says "retard" to him. Occasionally, it does relinquish the intended tone in order to make room for dark humour, but for the most part it provides a refreshing interpretation of the genre. To keep a story engaging, thrilling and suspenseful whilst making it intelligently humorous is quite the achievement. There were multiple scenarios where I certainly did gasp in shock and horror over certain plot details, proof that Joon-ho has crafted yet another captivating mystery. It must be said though, none of the above would've been as effective if it wasn't for Hye-ja's unprecedented performance. Phenomenal. Absolutely incredible. She commanded every scene through her ornate acting that exhumed fragility, power and sentimentality. Tackling the case head on, despite the detectives rarely caring about the situation, in what must've been a physically and emotionally demanding performance. Bin also gets a mention for his engrossing role as the accused son. From a technical standpoint, it's flawless. Joon-ho's directing techniques, Kyung-pyo's cinematography and Byung-woo's score. Sensational, with each element enhancing the dark world that Joon-ho has lovingly created. This rollercoaster definitely deserves your attention. You'll laugh at the dark humour, bite your nails during thrilling sequences although didn't your mother tell you that's a bad habit! , and empty your soul during the third act. Mother, yet again, is another example of pure South Korean cinema at its finest. It still hasn't convinced me to experience acupuncture though... From a superb asian director maybe the best around now a film that is a profound and disturbing drama about a mother-son relationship, with a violent side that makes it even more compelling and unsettling. Personlly I prefer The Host and Memories of a Murder from the same director but this is a definitely must see Two points: 1. The director specifically made this film with Kim Hye-Ja in mind and spent four years convincing her to make it otherwise he wouldn't make the film. The wait was worth it. In the Extras section one of the producers said that it should be the mission of the Korean film industry to try and make a better film than this. He may be right! Interesting and intriguing storyline. I don't think I'm giving anything away if I say the story is ultimately tragic as it might not be in the way you that you think. Not one to watch if you are looking for something to brighten your day. This has some good performances from the actors and has a degree of cultural insight which helps to make it interesting to watch. This movie portrays a strong message "a mother is a mother in any situation to his son". Really a good film boo jong ha. Kim hye -ja performance is breathtaking. Due to region B bluray I played it in my xbox one only bought in Europe at last summer. Thanks amazon for perfect delivery. Ordered another blu ray discs too.

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母なる証明 特集: “韓国の母”キム・ヘジャが見せた「狂気」という名の真価 (2)

母 なる 証明

社会の底辺を生きる人間たちを、どアップで捉えた悲劇。 彼は独特の映像感覚で描ききる。 破天荒でストレートな表現に宿る可笑しみは、懸命に生きる人間への祈りににも似た思いに裏打ちされているはず。 他に誰も真似できないポン・ジュノのマジック。 音楽も抜群にいい。 知的障害のある一人息子は、貧しい母にとってまさに目の中に入れても痛くない存在。 母と子二人で生きてきた。 息子の無実を訴えるため、恥も外聞もなく危険も顧みずボロボロになりながら突進する。 全身全霊をかけて行動する母のエネルギーは一体どこから生まれてくるのか。 売春も暴力も脅迫も汚職も日常茶飯事の、苦痛に満ちた泥沼のなかで、生きていくために必死な人々がいる。 貧困と悪が蠢くスラム街。 純朴な母と子がなぜこのようなことに・・・ 激しい悲しみに呆然とする母は、一体何にすがって生きていけばよいのか! 青山監督の『ユリイカ』の枯れ野原に、イニャリトゥ監督の『バベル』の荒野に、そして『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の歌い舞うセルマの姿に匹敵するオープニングとラスト。 ポン・ジュノが彼らと違うのは、ナタのような野太い切れ味。 哀しいほど見事です。 PS 先日たまたま飲み屋で話をした韓国人の女性がポン・ジュノ作品の大ファンだったので、映画談議に花が咲きました。 彼女は、「新作のMotherも韓国では既に高い評価を得ていて、日本で公開されるのが楽しみなんです。 」と、目を輝かせた。 『殺人の追億』、『グエムル 漢江の怪物』 に続く新作 『母なる証明』 は、期待に違わぬ力作でした。 29人がこのレビューに共感したと評価しています。 先日、私。 こんなレビュー投稿は到底私には書けないです 苦笑。 彼女は、「新作のMotherも韓国では既に高い評価を得ていて、日本で公開されるのが楽しみなんです。 」と、目を輝かせた。 HALUは、『殺人の追憶』は全くの未見です。 同じ韓国映画の『チェイサー』を観た時には、案外平気でしたが、本作の場合には映像的にもストーリー的にも、衝撃の余りに、観賞後の晩は悪夢に魘されてしまったほどでした。 しかしながら劇場鑑賞時には、母親像を我が身に置き換えて投影してしまいまして、ホロッと泣けてしまいました 泣。 『殺人の追憶』も同じような衝撃作品なのでしょうか? 私が鑑賞しても平気なくらいの作風でしょうか? <追伸> この度は、私の願いを叶えて「お気に入り登録」して下さり誠に有り難うございました。 今後ともどうか何卒宜しくお願い申し上げます。 それでは失礼致します。 返信を投稿• 彼は独特の映像感覚で描ききる。 他に誰も真似できないポン・ジュノのマジック。 音楽も抜群にいい。 母と子二人で生きてきた。 息子の無実を訴えるため、恥も外聞もなく危険も顧みずボロボロになりながら突進する。 全身全霊をかけて行動する母のエネルギーは一体どこから生まれてくるのか。 貧困と悪が蠢くスラム街。 ポン・ジュノが彼らと違うのは、ナタのような野太い切れ味。 彼女は、「新作のMotherも韓国では既に高い評価を得ていて、日本で公開されるのが楽しみなんです。 」と、目を輝かせた。

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映画『母なる証明』ネタバレあらすじ結末|映画ウォッチ

母 なる 証明

fa-arrow-circle-downU-NEXT 儒教社会である韓国では、「孝」つまり子が親に従う道徳観が根強く存在する。 同時に、親もまた子を教育する義務があり、特に家系を継ぐ長男ともなれば手塩にかけて相応に育てられることになる。 その過程で、厳格な家父長とのクッション役を果たすのが母親だ。 そんな理由もあり、韓国の男性は日本人からするとマザコン(韓国ではママボーイと呼ぶ)に見えることが多い。 今回取り上げる『母なる証明』は、そんな母と子の強い関係性を描いた作品だ。 ただし、この愛は究極的に過保護である。 ブルトンは「愛のどんな敵も、愛がみずからを讃える炉で溶解する」と書いたことがあったが、まさに本作における母と子の愛情は、その邪魔をする者を溶解させてしまう。 鬼才・ポン・ジュノ監督が描く、ある愛が狂気へと至る物語を紹介しよう。 2009年、ポン・ジュノ監督の長編作品4作目として『母なる証明』は公開された。 同年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門に出品され、サンフランシスコ映画批評家協会賞では外国語映画賞を受賞。 韓国内での興行成績もまずまずの結果で、観客動員数300万人は同年10位の記録となった。 主演は「国民の母」と呼ばれている キム・ヘジャ。 さらに兵役で芸能界を離れていた ウォンビンが、実に4年ぶりの復帰を果たしたことも話題となった。 殺人容疑で逮捕された息子の無実を信じ、自ら真犯人を探す母親を描く。 彼女の愛が引き起こすセンセーショナルな結末は、日本でも大きな話題を呼ぶことになった。 『母なる証明』あらすじ 韓国の小さな村で、ひとりの女が息子のトジュンとともに暮らしていた。 トジュンには軽い知的障害があり、馬鹿にされると見境なく人を攻撃する癖がある。 そんな息子のことを気にかけていた母だったが、ある日トジュンは女子高生アジョンの殺人容疑で逮捕されてしまう。 証拠とされたのは、事件現場に落ちていたトジュンのゴルフボールだった。 母は殺害を否定するトジュンの言葉を信じ、真犯人を探すために独自の聞き込みを始めるのだった。 トジュンの悪友だったジンテを巻き込み、母は殺されたアジョンの周辺を調べていく。 徐々にアジョンの正体が明らかになっていく中、 息子に対する彼女の愛は悲劇的な結末を迎えようとしていた。 『母なる証明』解説と考察 『殺人の追憶』から『母なる証明』へ ポン・ジュノ監督にとって、この『母なる証明』は二度目のサスペンス映画となった。 一度目は『殺人の追憶』(2003年)で、実際に起きた連続殺人事件を下敷きにした作品である。 どちらの作品も「冤罪」が物語の起点であり、知的障害を持った人物が登場する点も類似している。 特に『母なる証明』でドジュンが警察官から尋問を受けるシーンなどは、『殺人の追憶』における同様の場面を彷彿とさせるだろう。 さらに言えば、真相が宙づりになったままエンドクレジットを迎えてしまう点も同じである。 この後味がいつまでも残る感じ、いかにもポン・ジュノ監督らしい。 ラストで語られた事実をそのまま受け止める考察も多いが、結局のところ真相は藪の中である。 この二つの作品を比較すると、ポン・ジュノ監督の問題意識を明瞭に見てとることができる。 『殺人の追憶』の舞台となったのは1987年以前の軍事政権であり、そこには権力による 暴力が蔓延していた。 一方『母なる証明』では、もはやそこに暴力は存在しない。 だが、民主化された社会の歪みが 金銭の関係を通して表出するのである。 貧しい母が事件の聞き込みをしていくなかで、協力者に渡されていく金銭。 皮肉なことに、被害者の女子校生アジョンも金銭に追われる身であった。 そう考えると、この作品の主題は次作『スノーピアサー』(2013年)で描かれた 資本主義の主題と滑らかに接続されるように思える。 「母なるもの」の象徴であるキム・ヘジャ 公開時は「ウォンビンが帰ってきた!」と世の奥様方を歓喜させた本作だが、あらためて観ると、 彼だけでなく主演のキム・ヘジャの圧倒的な演技に気圧されてしまう。 数多くの母親役を演じ、韓国では「国民の母」と称されている彼女。 日本でいえば泉ピン子あたりが「年齢的には」近い存在だろう。 というよりも、そもそも韓国には「国民の母」が多すぎる。 『渇き』のキム・ヘスクに『屋根部屋のネコ』のキム・ジャオク、『不滅の恋人』キム・ミギョン……。 話を戻すと、本作でキム・ヘジャが演じた役には名前がない(クレジット表記も「마더」、本作の原題「母」である)。 固有の名を持たないということは、普遍的な「母」を象徴していると考えられるだろう。 実際、彼女は儒教社会における母性を体現しているように思えるのだ。 そのことが分かるのが、度重なる「薬」のイメージである。 彼女は小さな店で薬草を売って暮らしているし、非合法で鍼治療も行っている。 高麗人参や栄養ドリンクを配る場面も見られ、終盤では恵生院のボランティアを装って目撃者に近づく。 それと同時に、薬に対置される「毒」のイメージも与えられる。 トジュンの言葉から、かつて母親が彼と農薬で心中しようとした事実が明らかにされるだろう。 印象的なのが、あくどい弁護士の相手をした彼女が酒をあおり、トイレで吐く場面。 本作における「母」は他者に奉仕する存在なのであり、その逆は許されない。 だから終盤で彼女が目撃者からお茶を進められたとき、その身の破滅が予告されるのである。 次に観たい作品:『接吻』(2008年) 万田邦敏監督による2008年の作品。 小池栄子が演じる主人公のOLが、TVに映った殺人事件の容疑者に一目ぼれし、近づいた果てに獄中結婚する物語である。 キャッチコピーは 「究極の愛が行き着いた、衝撃の結末」。 話の構成はまったく異なるが、想像を遥かに超えた愛の形を描き、悲劇的なクライマックスへと向かっていく加速感は『母なる証明』と近いものを感じる。 観る者に感情移入をさせるための隙を与えず、しかし同時に吸い込まれるような魔力によってその心を捉えて離さない。 そんな作品である。

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